2021年12月議会
(1)実態調査
(2)市町村プラットフォーム
(3)相談しやすい環境づくり・住民の意識醸成
(4)支援者の育成・研修
(5)地域共生社会の実現と包括的支援体制の構築
(6)重層的支援体制
【背景】
社会福祉の領域において、生活困窮の課題や「地域共生社会」づくりの議論とも関連しながら、生きづらさを抱える「ひきこもる人たち」にどう向き合うかが問われるようになっています。社会問題として改めて注目されている「ひきこもり」。なぜ「ひきこもり」は増加し続け、社会問題化しているのだろうか。そこにはどのような問題が潜み、どのような福祉的支援が必要とされているのだろうか。また、令和2年から現在に至るまで、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、不要不急の外出の自粛が長期間にわたり求められ、「巣ごもり」と表現されるよな、国民がこれまで想像もしなかった生活スタイルが展開されました。いつもと異なる時間が流れる国民一人一人が自身や社会を見つめ直す貴重な機会となった一方、で、不安や生きづらさ、孤独感や孤立感をより深めた者も相当数いるものと推察されます。ひきこもり状態に陥るのは「自己責任」ではなく、「社会全体で取り組むべき課題」として捉えて施策を進めていただきたいと考えます。
(1)実態調査について
【質問】
国においてひきこもりの推計数が公表されておりますが、支援策の検討に当たっては、まず地域の実態やニーズの把握が必要であると考えます。本市におけるひきこもりに関するニーズについては、各種機関と連携し、実態把握に努めていくということでした。
質問します。具体的にどのように把握していく予定でしょうか。
【答弁】
現在、市内の民生委員・児童委員の方々に対して、ひきこもりに関するアンケート調査を実施しております。日々の活動の中で把握した「ひきこもりではないか」と思われる世帯の状況を回答いただくもので、12月中の回収を予定しております。本調査の結果を踏まえ、教育委員会に不登校児童生徒の情報提供を依頼し、得られた情報とあわせて、具体的なひきこもりの実態把握につなげていきたいと考えております。
【質問】
ひきこもりの方やその家族が抱える生きづらさや孤立は表面化しづらく、支援が必要な方を行政が認知しにくい面がある一方で、どの自治体にもひきこもりの悩みや苦しみを抱えている者は一定数いて、ひきこもり支援は人口規模にかかわらず、どの自治体でも取り組む必要があるテーマだと考えます。
質問します。市としての認識はいかがでしょうか。
【答弁】
ひきこもりについては、当事者が地域社会から孤立してしまうことで、生活困窮や孤立死などにつながるおそれが高いという認識をもっており、本市においても取り組むべき課題であると考えております。
(2)市町村プラットフォームについて
【質問】 ひきこもり支援推進のための「市町村プラットフォーム」は、支援を必要とする方を対象とした個別ケースの具体的な支援プランに関する情報共有や、対応方針の検討を行う場としての機能をもつものです。国は、原則、令和3年度末までに「市町村プラットフォーム」の設置に取り組むことを示しております。市は今後、多様な機関が参画している「相談支援包括化推進会議」を念頭に、「市町村プラットフォーム」の設置に向けた検討を進めていくということでした。
質問します。いつまでに設置する予定でしょうか。
【答弁】
現在、市社会福祉協議会との協働の下、町内関係課をはじめ、高齢・障がい・子ども・生活困窮の各分野の相談機関や、司法、医療、や就労に関わる関係機関が参画する「相談支援包括化推進会議」の開催を計画しております。その会議において、市町村プラットフォームの設置について、協議を進めることとしております。
(3)相談しやすい環境づくり・住民の意識醸成について
【質問】 本市におけるひきこもりの相談窓口は、市社会福祉協議会に委託している都城市生活自立相談センターが担っており、同センターでは、特に複合的な課題を抱えているひきこもりに関する相談について、市の福祉課や保護課、こども課などの関係課や、各相談機関と連携を図りながら包括的に対応しているとのことでした。また、都城市生活自立相談センターのリーフレットには、ひきこもりの相談を受け付けていることについて明記し、各相談窓口にもリーフレットを設置するなど、相談窓口の明確化・周知に取り組んでおられるようです。ひきこもり支援を推進するに当たっては、当事者の方やご家族の方の声をよく聞きながら取り組む必要があると考えます。
質問します。本市において、ひきこもりの当事者会や家族会があるか承知しているのでしょうか。また、当事者会や家族会とどのように連携しながら取組を進めていくのでしょうか。
【答弁】
本市には、ひきこもりの子を持つ親の会である「宮崎県楠の会都城支部」がございます。同支部代表の方には、都城市地域福祉計画の策定委員として参画いただいております。今後は、同支部の家族の集いに、市職員が参加するなどし、より関係性を深めていくことが重要と考えます。また、引き続き、都城市地域福祉計画の策定委員として、ひきこもり支援に対するご意見をいただきたいと考えます。なお、宮崎県楠の会は、全国的に組織された「NPO法人KHJ全国ひきこもり家族連合会」に属する団体でございます。
【質問】
ひきこもりの当事者や家族にとって、行政の相談窓口は敷居が高く、相談することを躊躇してしまうという声も聞くところです。当事者やご家族が相談しやすい環境づくりの一環として、例えば、同じ悩みを抱える方が自由に話すことができる当事者の集いや家族の集いなどを開催して、そこから必要な支援につなげる方法が効果的と考えます。
質問します。何か検討していることがあるのでしょうか。
【答弁】
宮崎県楠の会都城支部では、家族の集いなどを定期的に開催されており、10月の定例会に市職員も参加させていただきました。家族の集いでは、同じ境遇の中にいる保護者の皆様が、本音で悩みを話し合い、気兼ねなく話せる仲間づくりをされておりました。当事者家族が自ら参加し、運営されているからこそ、ひきこもりの子を持つ保護者が相談しやすい場となっており、市としては、同会と協力し、ひきこもり支援につなげていくべきものと考えます。
【質問】
ひきこもり支援を進めるに当たっては、当事者やご家族への支援だけではなく、広く住民の理解を深める取組も重要であると考えます。例えば、住民向けのシンポジウムや学習会の開催などが考えられます。
質問します。コロナ禍の中でも工夫しながら、このような意識醸成や啓発にも取り組んでいくべきと考えるがいかがでしょうか。
【答弁】
市が参画している都城北諸地域精神保健福祉協議会が、例年開催している「こころの健康」の講演会等において、ひきこもりに関連するテーマを取り扱っております。また、市のハロー市役所元気講座では、ひきこもり支援にもつながる「心の健康」や「自殺予防」のテーマで、随時、講座の申し込みを受け付けており、広く市民の皆様にご理解いただけるよう、周知・啓発に取り組んでおります。
(4)支援者の育成・研修について
【質問】
ひきこもり支援を進めるに当たっては、支援者がひきこもりの当事者やご家族の思いに丁寧に寄り添うことが必要であり、そのためには人材の育成が重要であると考えます。
質問します。支援者へのひきこもりの研修の実施など本市における人材育成の取組状況はいかがでしょうか。
【答弁】
国は、各都道府県等にひきこもりに特化した相談窓口の機能を有するひきこもり地域支援センターを設置することとしております。県では、宮崎県精神保健福祉センター内にひきこもり地域支援センターを設置し、ひきこもり支援を担当する市町村職員等や、ひきこもりの経験者を含む「ひきこもりサポーター」を養成しております。本市におきましては、県が主催する講演会や研修会に、市職員や私生活自立相談職員等が参加し、ひきこもり支援のスキル向上に努めております。
【質問】
研修に当たっては、ひきこもりの当事者やご家族の声を直接聞くことも大切であると考えます。
質問します。本市における研修でそのような機会があるのでしょうか。
【答弁】
ひきこもり地域支援センターの研修会において、ひきこもりの家族の方が講話されるなど、ご家族の声を直接伺う機会がございます。
(5)地域共生社会の実現と包括的支援体制の構築について
【質問】
制度や分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく「地域共生社会」の実現に向けて取り組むことが必要だと考えます。
質問します。本市においては、どのようなビジョンを持って取り組んでいくのでしょうか。
【答弁】
本市では、子ども、障がい者、高齢者など全ての市民の皆様が、それぞれに地域生活課題を抱えながらも、住み慣れた地域で自分らしく暮らしていける地域づくりを進めるため、都城市地域福祉計画を策定しております。本計画では、『自然とふれあい、ひととを思いやり、ともに支え合うまち、安心して健康にずっと暮らし続けたい「“ふくしのまち”都城」』を理念とし、「分野を超えてみんなで支える体制づくり」、「ともに支え合うお互い様の地域づくり」、「一人ひとりを支える基盤づくり」の実現に向け、取り組んでおります。
【質問】
「8050」「ダブルケア」「社会的孤立」など、複雑化・複合化した課題を抱える世帯の存在が指摘されています。
質問します。このような問題にどのように立ち向かっていくのでしょうか。
【答弁】
本市では、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」を市社会福祉協議会に委託し、高齢・障がい・子ども・生活困窮といった各分野の相談機関を総合的にコーディネートする「相談支援包括化推進員」を配置しております。分野を超えて包括的に対応する相談体制を構築することによって、複雑化・複合化した課題を抱える世帯に向き合い、問題の解決に取り組んでいるところです。
(6)重層的支援体制について
【質問】
市町村における包括的な支援体制の整備に向けて、令和2年の社会福祉法改正において、新たに「重層的支援体制整備事業」が創設され、令和3年4月から施行されております。
質問します。本市における取組状況はいかがでしょうか。
【答弁】
本市では、平成30年度から「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」と「地域力強化推進事業」に取り組んでまいりました。これらの事業は、重層的支援体制の整備につながるモデル事業として位置づけられているものです。更なる包括的支援体制kの教科を図るために、これまでのモデル事業の取組を踏まえ、今後の方向性を検討しております。
ひきこもり支援においては、個々の当事者やご家族の状況に寄り添った上で、スモールステップにより、一歩ずつ息長く支援を進めていく必要があります。
質問します。政策評価として、数値目標などを立てづらい領域であると考えますが、その中で、どのような評価軸を置いて、支援の継続性を確保していくのでしょうか。
【答弁】
現在、ひきこもりの実態調査中でございますので、現時点では、評価軸の設定まで至っておりません。しかしながら、ひきこもりの方に対しては、各分野の相談機関等との連携の下、信頼関係の構築に努めるなど、長期的な視点で関わっていくことが重要であると考えております。
【質問】
ひきこもり支援においては、行政内でも複数の課の連携が必要であり、更に、行政を超えて地域の民間社会資源を活用することが必要であると考えます。
質問します。どのようなネットワークを構築していく考えでしょうか。
【答弁】
複雑化・複合化した課題を抱えるひきこもりに対しては、包括的な支援を提供していくことが重要であることから、行政内の連携はもちろんのこと、地域の様々な社会資源ともつながっていく必要があります。これまで、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」において、包括的な支援体制の整備に取り組んできたことを踏まえ、分野を超えた横断的なネットワークを活用していくことが重要であると考えております。
【質問】 「ひきこもりサポート事業」、「アウトリーチ等の充実による自立相談支援機能強化事業」について以前伺いましたが、本市においては、現在のところ事業は活用していない状況で、まずは、活用可能な資源の情報収集から取り組む必要があると考えているということでした。
質問します。活用な資源の情報にはどのようなものがあったのでしょうか。
【答弁】
活用可能な資源としましては、様々な機関が参画している「相談支援包括化推進会議」が挙げられます。また、現在実施しているひきこもりの実態調査の結果等を踏まえ、課題解決に必要な新たな資源としてどのようなものがあるかを精査してまいります。
【提言】
ひきこもり支援について深く伺いましたが、やはりポイントになるのは、実態把握になるかと思います。民生委員と教育委員会の情報だけでなく、20代、30代でのひきこもりの方を把握できる方策の検討を提言いたします。
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