2018年9月議会
(1)解体した場合
(2)民間主体による保存活用をした場合
(3)行政主体による保存活用をした場合
【背景】
旧市民会館は都城のランドマーク的存在であり,都城市民にとって関心のある問題の1つであります。特徴的な外観は印象に残り,都城弁でのCMも記憶に残っています。MJホールができる前は都城泉ヶ丘高校や西高校は文化祭を旧市民会館で実施しており,高校総合文化祭においても吹奏楽部とうの演奏があり,鑑賞したことを覚えています。議会として都城にとってベストな選択するためにも,あらゆる可能性を検討し,責任ある決断の必要性を考えています。
では,旧市民会館について順次質問させていただきます。
(1)解体した場合について
【質問】
本市の方針としては,平成19年の解体予算可決という市議会の意思を尊重し,解体せざるを得ないと伺っております。また,市民アンケートは前回よりも親切丁寧であったとも聞いております。そのアンケート結果は,4000人を対象に実施し,有効回答人数が34.4%で1377人,そのうち解体が83.5%の1150人と伺いました。
質問します。解体費用や映像・模型などのメモリアル費用にかかる経費ついて教えてください。
【答弁】
旧市民会館の解体工事費につきましては,南九州学園が委託した専門コンサルタントによる検討結果によりますと,他の事例を参考に,概算で約1億6千万円を見込んでおります。仮に平成31年2月に「解体する」との方針に至った場合は,実際には設計を踏まえて工事費を算出し,平成31年度当初予算に計上する予定としており,その時点で,メモリアル費用も併せて,詳細をお示し出来るものと考えております。
【質問】
解体後の更地は,駅や市役所,中心市街地が近く場所的にも価値のある場所ではないかと考えます。
質問します。解体後の土地活用について教えてください。
【答弁】
旧市民会館が立地している地区につきましては,住宅や公共施設が立地しており,今後まとまった広い土地を確保することは容易ではありません。仮に旧市民会館を解体することとなった場合には,周辺の今後の公共施設のあり方を踏まえて,跡地の活用方法を決定していく必要があると考えております。
【質問】
質問します。解体した場合の本市にもたらす効果や影響について考えを教えてください。
【答弁】
専門コンサルタントによる検討結果を踏まえると,活用の仕方にもより大きく異なりますが,旧市民会館を本市が自ら保存活用する場合に必要となる事業費は,少なくみても初期投資で15億円程度,維持管理費として毎年1~2億円を要することになるものと考えます。仮に,旧市民会館を解体した場合は,このような財源を,人口減少対策や子ども子育て支援,あるいは小中学校のエアコン設置などの本市の優先すべき政策課題に充てることが可能になるものと考えております。
【提言】
アンケートで解体を選択した方の理由は,約44%が,「お金がかかる」でした。跡地の活用方法を決定する場合は,これを踏まえての検討をしていただきたいと考えます。
(2)民間主体による保存活用をした場合について
【質問】
旧市民会館は老朽化が進み,リスクがあるということでしたが,都城市民会館再生活用計画検討特別委員会では各分野の専門家による調査研究を実施し,その結果,旧市民会館は構造体力上健全性を有しており,大規模な耐震改修の必要性はないとあります。解体の根拠がなくなることになります。また,アンケート結果では,保存活用の方が15.3%でした。これは,都城市民の約15%の2万4千人は保存してほしいと考えていると考えることもできます。市は,民間企業等による保存活用の財源の確保に目算のある提案があれば,それを尊重して判断するという方針で,このたび,日本建築学会との協議を実施し,平成31年1月末日まで民間提案期間を延長しています。億単位の投資ができる企業においても,株主総会での承認をとったり,確実性のある提案書を作成したりするのに1年を有すると思われます。日本建築学会からは関心のある民間企業が複数あると全員協議会の中でありました。1月末日という期限は,半端な気がするところです。
質問します。民間企業から提案がある可能性が高いのでしょうか。
【答弁】
民間企業による保存活用につきましては,日本建築学会の働きかけにより,これまでに2社から提案表明や相談が本市に寄せられたところであります。日本建築学会から,この8月末に,文書で民間提案期間の延長の申し入れがありましたが,その中で,日本建築学会は引き続き責任を持って最大限の努力を払い,民間企業の参画を積極的に働きかける旨の約束を述べられたところであります。検討期間さえあれば,保存活用に名乗りを上げたいと考えている民間企業が複数あるとのことでしたので,本市としても期待したいと考えております。
【質問】
質問します。民間主体による保存活用をした場合の本市にもたらす効果や影響について考えを教えてください。
【答弁】
民間企業から,財源に確実性のある提案がなされ,持続的に活用していただけることになれば,市の財政負担も伴わず,旧市民会館が保存されることになります。一方,本当に,その民間活用案が持続可能な形で活用され続けるのか等の問題も考えられますので,民間企業による保存活用案を採択する場合には,これらの点を払拭できる契約を結ぶべきであると考えております。
【提言】
学会の方々が,旧市民会館のために,自費で国内外に行き,企業に働きかけているようです。通常,一学会がここまですることはありませんし,する必要もありません。しかし今回,なんとか保存できないかと活動していらっしゃる様子を知ると,建築学会の方々には感謝する次第です。そして,旧市民会館はそれだけ重要なものであると再確認するところです。しかし,活用されずに返還された過去がありますので,確実性と持続性のある企業が現れることを期待したいと思います。
(3)行政主体による保存活用をした場合について
【質問】
本市としては,10年前に議論を尽くし,市は解体方針を決定したため,自ら保存活用する考えはないとのことですが,市民の中には,行政に保存活用をしてほしいと望む声もあります。人口減少対策,子ども子育て支援などの優先すべき政策課題が山積しており,本市のみで保存費用を負担することは極めて困難であるとの方針です。発想を変えて人口減少対策,子ども子育て支援事業としてマルマルのように活用できないでしょうか。本市は総合計画において,「ゆたかな心が育つまちとして市民が芸術文化、スポーツ、読書にいつでも親しむことのできる環境づくりも求められています。そうすることにより、誰もがここに暮らしてよかったと実感でき、このまちに誇りをもつ、ゆたかな心を育てることができるのです。」と記載しています。民間で保存活用する場合,8億3千万程度との試算がでています。地方公共団体が自主的・主体的に取り組むことで地方創生推進交付金の活用ができます。南九州大学からの協力金で当分の間の暫定利用費がまかなえます。別府市の湯~園地のようにクラウドファンディングや寄付,また,ふるさと納税の中に利用目的の項目に旧市民会館の項目を作成するなどして資金を募れば市民に財源の負担をかけることもありません。そして活用後の維持費にはネーミングライツを利用できるのではないでしょうか。
質問します。財源や費用についての議論は十分されたのでしょうか。
【答弁】
日本建築学会が試算した額は,あくまでも基本工事費のみで,内装や備品等の費用は含んでおりません。本市が活用するとなると,活用の仕方にもより大きく異なりますが,少なくみても初期投資で15億円程度,維持管理費として毎年1~2億円を要することになるものと考えます。初期投資の財源といたしましては,公共施設整備等の維持管理の財源や人口減少対策等の本市の優先すべき政策課題を進めるうえでの貴重な財源として積み立てているものであります。また,クラウドファンディングにつきましても,先進事例を見ると億単位で寄付を集めることは容易ではありませんし,地方創生推進交付金につきましても,国の政策目的に合致することが必須であり,採択を受けたとしても補助率は2分の1であることから,市の負担が避けられるものではありません。ネーミングライツの活用につきましても,県総合運動公園の5施設を合わせても年間4千万円とお聞きしており,この額では維持管理費用の財源としては十分ではなく,結果として,経常的な経費の増加を招いてしまうものと考えます。このように本市が主体となって保存活用することにより,市民生活に直結した政策課題の解決に必要な財源の確保に影響が生じることから,規律ある財政運営の面からも困難であると考えております。
【質問】
旧市民会館は日本の近代建築,メタボリズム建築の1つであり,価値があると言われています。建築50年が経過し,登録文化財の資格を得ました。東京理科大学の山名教授は数年後,日本の近代建築を世界遺産にしようという動きが出てくるとき,都城市民会館は「中銀カプセル」「国立代々木競技場」とともに間違いなく候補の1つになりますと言っておられます。山名教授はICOMOSのメンバーであり,西洋美術館が世界遺産に認定されるのに関わっておられます。ICOMOSは文化遺産保護に関わる国際的な非政府組織で,ユネスコをはじめとする国際機関と密接な関係を保ち、世界遺産条約に関しては、諮問機関として、登録の審査、モニタリングの活動等を行っています。つまり,世界遺産の登録審査をされる方が世界遺産の候補になると言われているのです。また,ICOMOSのメンバーが2020年東京オリンピックの年に来日されるので,そのときに旧市民会館を視察していただきたいとの話もあるようです。
質問します。世界遺産を視野に入れた保存活用の検討について議論は十分されたのでしょうか。
【答弁】
日本の世界遺産につきましては,建物などの文化遺産と自然遺産があり,文化遺産としては,法隆寺等の仏教建造物や姫路城,原爆ドームなどが登録されております。まず,登録を目指す物件は,文化財保護法によって,国宝や重要文化財などに指定されていることが条件であり,築50年を経過することにより登録が可能な登録有形文化財と異なり,国が,特に重要で価値があるものとして指定する必要があります。その重要文化財等の中から,国が,世界遺産に登録を目指すリストをユネスコ世界遺産センターに提出し,そのリストの中から,1年につき1件を推薦していくという仕組みとなっております。その上で,諮問機関であるイコモスが現地を調査し,年に1回開催されるユネスコ世界遺産委員会で登録の可否が決定されるため,手続きに相当な期間を要することになります。例えば,近代建築では,世界三大巨匠と呼ばれる建築家が設計した日本の国立西洋美術館などが,フランス政府が日本政府に働きかけてから世界遺産に登録されるまでに約10年を要しました。国が,いつ旧市民会館を重要文化財や国宝に指定するのか,1国1年に1件しか推薦できない枠に本当に入ることができるのか,現在のところ全く確証がありません。仮に,旧市民会館が国に推薦される可能性があったとしても,それまでの間,老朽化が進む建築物を誰が,どのように維持していくのかについても確実な具体性をもって示されるべきであると考えます。
【質問】
質問します。行政主体による保存活用をした場合の本市にもたらす効果や影響について考えを教えてください。
【答弁】
行政が主体となって旧市民会館を保存活用することになれば,市の財政負担を伴いつつ,旧市民会館が保存されることになります。一方,行政が主体となることで,人口減少対策や子ども子育て支援,あるいは小中学校のエアコン設置など本市が優先すべき政策が後回しになるものと考えます。
【提言】
市は自ら保存活用する考えはないとありましたが,10年前と社会状況は変わっており,当時を知る議員も3分の1程度になっています。言い換えると3分の2の議員は新しく市民から負託を受けているため,我々はしっかりと判断する必要があると考えます。そこで今回,旧市民会館を解体した場合,民間主体で保存した場合,行政主体で保存した場合という3つの切り口で質問しました。市としては,解体した場合が,ベストだということが伝わりました。次世代のために世界遺産を選択するのでなく,今を生きる子どもたちのために,エアコンを設置することを選択した市を評価したいと思います。保護者の代表としては,義務教育期間における給食費や医療費の無償化など,行ってほしい子育て支援はまだまだあるところです。もし,20年後,国立代々木競技場などが世界遺産になったときでも,次世代の子供や市民に対して,旧市民会館に関するあのときの決断は正しかったといえるよう,あらゆる場合を検討して,結論を出すよう提言いたします。
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